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旅術 〜バーチャル旅日記〜


第六章:「アクシデント」


「すんません、日本人の方っすか?」
男がコトーの国内線で首都ボッタレー行きのチェックインカウンターで待っていると、後ろから金髪の男が話しかけてきた。金髪と言ってもれっきとした日本人で、ただ染めているだけのようだった。服装も変わっていたが、その頭だけでかなり目立っている。

「ああ、そうですが・・・ 何か?」
「よかったすよ。日本人がいて。ボッタレーに行くんでしょ?一緒にどうっすか??」

男は少し戸惑った。こんな奴には会ったことがない。正直一緒に行きたくないと思ったが、どうも断り辛い。やはり自分は日本人だと改めて思った。

「まだボッタレーの宿とかまったく決めていないが、、、いいのかい?」
「いいっすよ。1人で退屈だったんっすよ」

よく見ると金髪の男はボストンバックを担いでいた。バックパックではない。変わった奴だ、男は思った。


国内線と出会いA
【国内線】
国際線と違い出国手続きがない分、それほど早く行く必要はない。国際線の2時間前に対し、国内線は出発の1時間前でOK。ただ慣れない空港だったり、不安がある場合は早く行く事に越したことはない。尚、国内線でも当然パスポートは必要。

【出会いA】
旅の途中よく一人旅をしているパッカーに会うだろう。こちらも1人なら結構仲良くなったり、バスや宿をシェアしたりする事もある。経済的な理由以外にも、人恋しさ等の理由からでもあるだろう。しかし、一人旅を好む多くのパッカーは制約を好まない。人と一緒に居たくない人もいれば、最初は良くてもしばらくすると距離を置きたくなる人もいる。難しいところだが、その辺りは気をつけたい。逆に望まないのに相手に付きまとまれる場合もあるが、中にははっきりと言わなければ分からない人もいるので、その際は言うべきだろう。

誰かと一緒に行動するのならば、やはり相手の事をしっかりと考えてあげたい。変なところで「旅の道連れ」を作らないように。。



国内線は1時間前までにこれば良かったが、ボッタレー行きの便が午後と言う事もあり、男は少し早めに空港へ来ていた。小さな空港だったが、比較的多くの人で賑わっていた。空港には独特の雰囲気があり、男は何故かそれが嫌いだった。それを避けるために、男はよく何も考えずに空港の椅子に座っている事があるが、残念ながら今日はそうはいかないようだ。

「んで、ですね・・・」
先の女学生ほどではないが、この金髪もよく喋った。話によると現在フリーターで、年齢は男より5つほど下だった。バイトをしてはふらっと海外に来るらしい。たまに長期の旅行にも行くそうだ。旅の話が好きなようで男に今まで訪れた国の話や、体験談などを嬉しそうに話す。しかしそのほとんどが自慢話だった。

「・・・で、そこが大変だったんすよ。何せバスで60時間以上続けて乗っている上に、雪が降るぐらい寒い。いや〜、死ぬかと思っちゃいましたよ〜。バスに60時間とか乗った事あります??」
「いや、ない」

まだ続く。

「そこで何食べさせられた思います??蛆虫みたいな幼虫ですよ!幼虫!生きてるんすよ、まだ。まったく困ったもんっすよね。世界70カ国以上旅してますけど、あんなもん食わされたの初めてっすよ。幼虫、食べた事あります??」
「いいや、ない」

こんな会話が飛行機の中、そしてボッタレーに着くまで続いた。


久しぶりにやって来たボッタレーは、相変わらず晴天で、強烈な日差しが照りつけていた。
男はエアポートタクシーの乗ろうとしたが、2人だとタクシーを使った方が安いとの事だったので金髪とシェアする事にした。宿はやはり旧市街地にとった。金髪のお勧めがあるとの事だったので、そこに行くことにした。ありふれた宿だったが、屋上に朝からコーヒーが飲めるスペースがあり、唯一そこが気に入った。

ボッタレーに来てから、さすがに男と金髪は一緒に行動することはなくなっていた。男が少し距離を置いた事もあるし、それに金髪が部屋にこもって大麻を吸っていたからだ。

「・・?あれ、やらないんすか?」
金髪の部屋を訪れた際、ふとそう尋ねられた事があるが、男は薬には興味がなかったのではっきりと断った。金髪の話では、コトーには質の高い大麻が安く手に入るらしく、その為にわざわざ買いに出かけていたそうだ。

「いや、興味ないんでいいよ」
「そっすか、楽しいっすよ」
「いや、ありがとう」

それ以来金髪とはほとんど会っていない。


ドラッグ
海外を旅していると、意外と薬をやっている人が多いことに驚くだろう。それを目当てに旅している人もいれば、旅の中で初めて経験する人もいる。安くて品質の良い薬が手に入るのも、海外の魅力の1つらしい。
しかし、ほとんどの国でそういった大麻を含んだ薬は、取締りの対象になっている。簡単に死罪や無期懲役が科せられるのも海外の特徴である。ガイドブックなどによく軽い気持ちで薬に手を出した人の悲惨な結末が載っているが、すべてが嘘ではない。実際海外の刑務所などは、環境が酷いところも多い。
どちらにしろ、その国の法で禁止されている事はやるべきではないだろう。



そして、日本への帰国を翌々日に控えた朝、いつものように屋上でコーヒーを飲んでいた男に宿の従業員が慌ててやってきた。

「どうしたんだい?」
男が尋ねると、従業員は答えた。

「あんたと一緒に来た金髪の男の体調が悪いんだ。ちょっと来てくれないか?」
「分かった」

金髪はほとんど英語ができなかったので、従業員が助けを求めにきたのだろう。男はそう思った。金髪の部屋に入ると、空気が篭っているのが感じられた。男は気持ちが悪かったので、まず部屋の窓を開ける事にした。そして、ベッドで横になっている金髪の側に寄る。顔が青い。体調が悪いのは明らかだ。

「どうした?」
男が尋ねる。
「ああ、ちょっと腹痛くて・・・ 動けないんすよ・・・」
「下痢か」
「ええ、下痢っす。どうも熱もあるみたいっす」

金髪は苦しそうな顔をして答える。隣にいた従業員が男に尋ねる。
「彼は下痢か?」
「ああ、そうだ」
「薬は飲んだのか?医者に行くか?」
「聞いてみる」

男は再度苦しそうにしている金髪に話しかけた。

「何か薬は飲んだか?それとも医者に行くか?」
「そうっすね、この痛みちょっとやばいんで、医者に行きたいっす。日本語の通じる病院ってあるんすか?」

従業員に話すと、新市街に大きな病院があるらしい。タクシーを呼んでくる、そう言って従業員は部屋を出て行った。

「今、タクシーを呼びに行った。少し歩けるか?」
「ええ、大丈夫っす・・」
「それより、保険には入ってきたのか」
「ええ、入ってきました。これっす」

金髪は机の上にあった海外旅行保険書を男に渡した。

「よし、じゃあ行こう」

新市街にある病院までタクシーで20分ほどで着いた。車の中でも金髪は気持ち悪そうにしていた。病院はとても大きく、施設も立派なものだった。日本語の通訳もいて、何も男が付いて来る必要はないほどだった。
金髪の原因は「食あたり」だった。旅では良くある病気で、下痢の他に熱も発する。病院などで点滴を打って安静にすれば、比較的早く治る病気でもある。金髪も念のため1泊病院に泊まることになった。


アクシデント
【病気と保険】
旅にどうしても付き物なのが病気。タイトなスケジュールや、無理な行動をするとすぐに体調を壊すので気をつけたい。一般的には健康的な生活や食事に注意していれば大丈夫だが、それでも病気にかかってしまう事もある。
そんな時には病院に行くのも1つも手だ。現地の人々が行く病院に行ってもいいが、保険を持っているのならば日本語の通じる信頼のできる病院を勧める。首都クラスなら大概この手の病院はあるので、ガイドブックなどを参考にして探して欲しい。

そして保険で注意したいのが、海外旅行保険に加入したからといって100%無料で診察して貰える訳ではない。病院側は患者の保険書をもとに、保険会社に連絡を取り、保険会社から治療費を支払うとの回答が出て初めて「保険が適用」となる。海外で起こった病気や怪我なら大概対象となるが、日本から抱えている持病や、歯医者などは対象にならない。保険が対象にならなくて、どうしても納得がゆかない場合は、一旦現地で支払い、帰国後領収書を持って保険会社を尋ねてみよう。
何はともあれ、短期の旅行でも海外旅行保険は必ずかけるべき。


【紛失・盗難】
日本でもそうだが、海外旅行中の紛失物はまず出てこない。金目の物なら尚更だ。一番いいのは「高価な品物は持って来ない」だが、カメラなど必需品もあるだろう。基本は常に気を掛ける、これを頭に入れておこう。
尚、保険についてだが、海外旅行保険で紛失や盗難物を保証してもらえる事がある。補償の方法は保険会社によって様々だが、盗難などに遭ったら必ず現地の警察が発行する「盗難証明書(できれば日本語または英語)」を貰っておこう。大概無料でくれる。これをもとに保険会社が判断する事がある。だが、最近は保険詐欺を警戒して、カメラなどの貴重品の盗難だけでは発行してもらえない事が多い。パスポート紛失では間違いなく貰えるのだが、一応頭に入れておこう。尚、現金などは保険の対象外。



「英語が下手で、うざったい男からの電話だろ?」
「そうだが、何故分かるんだ?」
「いや、なんとなくな。今、ロビーまで降りるよ。ありがとう」

ロビーに掛かってきた男宛の電話を伝えにきた従業員は、少し不思議そうな顔をして去って行った。
男はロビーに降りると、置いてあった赤色の安っぽい受話器を取った。

「もしもし」
「もしもし、俺だ」
「俺なんて奴は知らないと言ったが、覚えていないのか?」
「何だつれないな。機嫌が悪いのか」
「金髪の件、、、あれはお前がやったんだろ?」
「金髪??何のことだろうね。分からないよ」
「ちっ、しらを切るつもりか。まあいい。で、何のようだ。明後日には帰国だが」
「そうそう、忘れてた。HPの見てくれた人からメールが来て、是非ボッタレーの夜の街を歩いて欲しいんだって」
「夜の街?」
「そう、夜の街。もちろんただ歩くだけじゃないよ。分かってるよね」
「断る」
「だめ」
「何でそんなところに行かなきゃならんのだ。これは俺の旅のはずだ」
「これは君の旅であって、僕の旅であって、これを読んでいる人の旅。だからダメ」
「意味が分からんな」
「そのうち分かるよ。それとも今度は飛行機でも落とそうか」
「くっ・・・ 何て奴だ。」
「ふふっ、いい子だね。じゃあ、明日気をつけてね」
「おい!待て・・」
がしゃん

男は普段より多めにロビーで酒を買い込むと、そのまま自分の部屋まで一気に駆け上がった。


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